男うた女うた―女性歌人篇(馬場あき子・著)




男うた女うた―女性歌人篇 (中公新書)』を読みました。万葉の昔から20世紀初頭まで、時代順に歌をピックアップして、初心者にも分かりやすく解説してくれる一冊です。以下、印象に残った歌を引用します。「P」は、引用元のページ数を意味します。

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○P006
さねさし相模(さがみ)の小野(をの)に燃ゆる火の火中(ほなか)に立ちて問ひし君はも

○P015
あかねさす紫野(むらさきの)行き標野(しめの)行き野守(のもり)は見ずや君が袖振(そでふ)る

○P021
秋山の樹(こ)の下隠(がく)り逝(ゆ)く水のわれこそまさめみ思ひよりは

○P030
遊士(みやびを)とわれは聞けるを屋戸(やど)貸さずわれを還(かへ)せりおその風流士(みやびを)

○P048
君が行く道のながてを繰(く)り畳(たた)ね焼き亡(ほろ)ぼさむ天(あめ)の火もがも

○P063
色みえでうつろふものは世の中の人の心の花にぞありける

○P081
わが宿はそことも何か教ふべきいはでこそみめたづねけりやと

○P093
留(とど)め置きて誰をあはれと思ひけむ子はまさるらん子はまさりけり

○P162
向ひゐて千代も八千代も見てしがな空行く月のこととはずとも

○P174・176
後世(ごせ)は猶今生(こんじやう)だにも願はざるわがふところにさくら来て散る
わが棺まもる人なく行く野辺のさびしさ見えつ霞たなびく
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時代が違うからか私の想像力が足りないのか、共感できない歌もありましたけれども、作品によってはなるほどと納得させられるものもありました。手に取らなければ、なかなか古典は私にとって縁遠い存在ですので、鑑賞する機会に恵まれなかっただろうと思います。また、一番最後に引用した(P174)作品の作者である山川登美子については、機会があれば他の歌にも接してみたいと思わされました。

本書、手にとってよかったです。


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近藤芳美集〈第9巻〉歌い来しかた(近藤芳美・著)




近藤芳美集〈第9巻〉歌い来しかた』を読みました。正確には「岩波新書348」の同タイトルの書籍で、「わが短歌戦後史」という副題の新書を読みました。Amazon.co.jpに書誌がないため、上記書誌を表示しています。以下引用のページ数も上記書籍ではなく新書版のページになります。紛らわしくてすみません。

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○P005
征(ゆ)く君と話少なしなほ生きて世の移るさま見たしとも言ふ

○P011
いつの間に夜の省線にはられたる軍のガリ版を青年が剥(は)ぐ

○P030
自(みづか)らの意志を持てよと説くことの唯おどおどとして理解せず

○P055
手術して見よと言はれて泣きて居る妻よ寝巻にオーバーを着て

○P084
時代より身を守れよと君は言ふ女なれば母の如きいたはり

○P128
死にて行く母を見て来し吾が妻が夜明けに帰り吾が名をば呼ぶ

○P134
電気椅子にすでに終わりしいのち二つ関りもなき吾がたかぶりに

○P147
たれが斯(か)く今言ひ得るや生きむため恥なきいのち彼ら生き得るや

○P191
憎しみを悲哀に変うる十二年花にて覆う死者たちの碑を

○P194
人工衛星遠く一匹の犬生きて今また寂し戦争の語彙
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1940年代〜1950年代の歌が中心かと思いますが、とくに「憎しみを悲哀に変うる十二年花にて覆う死者たちの碑を」が印象に残りました。憎しみの連鎖は、憎しみを悲哀に変えるだけの時間を得られないから止まらないのかな、と感じたので。


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北米万葉集―日系人たちの望郷の歌(大岡信・著)




北米万葉集―日系人たちの望郷の歌 (集英社新書)』を読みました。歴史や映画や小説や、家族から伝え聞いた中でしか知らない時代について、北米地域で「日系人」として暮らした方々の歌がおさめられています。密閉されていたたいむカプセルを開いたような気持ちになりました。以下、上記書籍から引用します。「P」は引用元のページ数を示します。

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○P30
独りにて降るアメリカに年を廻りあはなむ人よいづくに

○P32
日米の国交の危(あやふ)さ書き列(つら)ね叔父の便りは帰国うながす

○P34
今年こそ故山に錦飾らんと意気まきかへすわがレタスなり

○P38
しかすがに機械文明の国と思ふ庭の芝生を刈るも自動車

○P46
白人に気兼ねはしつつバスのなか繰返へし読む凶変の報を

○P56
群立病院に死ぬ同報(はらから)のこの頃多きを新聞に見つつさみしむ

○P140
祖国を持つわれをうらやむ黒人の時にはふれて嘆き言(ごと)いふ

○P220
友達に対する如く師にむかひものたづぬるも二世の娘ら

○P232
苦闘の道辿りて移民のその一生(ひとよ)終らむ時し市民権与えらる
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歌、一つ一つに番号をふり、右のページでは歌、左のページでは著者の解説という形で本書はできています。著者の解説を読んで、もう一度歌に戻ると、奥行きが深まった気がしました。この本を手にとって良かったです。


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ヴァイブレーション!フルエル心ノケータイ短歌(ふかわ りょう・編/加藤 千恵・編)




ヴァイブレーション!フルエル心ノケータイ短歌 (マーブルブックス)』を読みました。

2002年〜2003年にNHKラジオ第1放送と、NHK教育の企画で、読者参加型の番組に投稿された短歌から、編者二人が選んだものなのですね。エッセイや対談、枡野浩一さんによる短歌の手ほどきなどがおさめられています。以下、印象に残った作品を引用します。「P」は引用元のページを示します。

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○P9
改札のところにキミが立っていてなぜかそこだけ光って見えた

○P13
くちびるに甘く酔う毒ぬっておくゆかたの夜のくちづけのため

○P15
リカちゃんは別格としてペコちゃんや鼠のミニーに彼氏がいるのにっ

○P45
友達のデートの予定聞き流し溜息一つバイトへ向かう

○P51
朝起きて君の夢を見ていたと気付いた途端二度寝突入

○P75
熱をもつ充電しかけた携帯と交わし足りない君への言葉

○P85
授業中かっこ悪いとこ見せたから好きだと言うのはあさってにする
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色んな人が、色んな思いでケイタイ/携帯を握ってるんだな、というのが一つと、色んな思いがあるようでじつは結構みんな良い意味で似たりよったりの「喜怒哀楽」を抱えて居るんだなと感じました。「自分だけの悲しみ・自分だけの孤独」と抱えているものが、実は並べてみると隣接しあっているというか。もちろん、「その人だけのもの」であることは確かなんだけれども。歌にしてしまうと、「あー、そういうのあるある」と共感しやすくなるのかもしれないですね。


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手紙魔まみ、夏の引越し(穂村弘・著/タカノ綾・絵)




手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』を読みました。黒い兎を妹だと連れてきたまみという女の子と同居してる設定、なのかな? あるいは、無数の手紙の中から歌をピックアップしていて、途中から一緒に暮らし始めた設定なのかもしれません。「手紙魔まみ」というフィクションが、歌を通して存在感を持つようになるのが、とてもユニークだと思いました。以下、印象に残った作品を幾つか引用します。「P」は引用元のページ数を意味します。

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○P6
目覚めたら息まっしろで、これはもう、ほんかくてきよ、ほんかくてき

○P13
本当にウサギがついたお餅なら毛だらけのはず、おもいませんか?

○P19
海の生き物って考えてることがわかんないのが多い、蛸ほか

○P32
ドアの前で眼があったときこの部屋に入りたそうにしてたゴキブリ

○P46
フランケン、おまえの頭でうつくしいとかんじるものを持ってきたのね

○P75
舌だしたまんま直滑降でゆくあれは不二家の冬のペコちゃん
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刹那的なような、無垢なような、でも何か知ってしまったような、とてもややこしい感じがして、そのややこしさが、ある世代の女性っぽさを出している気がしました。男性から見た、虚構なのかもしれないけれど。

手に取ってみて良かったです。


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万葉体感紀行―飛鳥・藤原・平城の三都物語(上野誠)




上野誠の万葉エッセイ を運営されている上野誠さんの『万葉体感紀行―飛鳥・藤原・平城の三都物語』を読みました。

イラストの地図一つとっても、地域や万葉集への愛情がこもっているような気持ちがします。名ガイドにいざなわれ、歌の話を聞いたり、美しい風景を眺めたり(写真を眺めたり)できる一冊です。なんていうか、JR東海は本書を使ってもう一つの「そうだ、京都、行こう。」的なものを作れるんじゃないかと、あれこれ考えてしまいました。そんな贅沢な一冊です。旅行に行けないけど今はちょっと席を外せない方に、お勧めします。


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恋ヲスル果実(沢木理桜・著)




恋ヲスル果実』を読みました。恋の歌がおさめられています。印象に残った歌を幾つか引用させていただきます。

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○P9
パソコンのディスプレイより流れ出す言葉の海に溺れゆく

○P15
その声をずっとずっと聞いていたいから熱ありしこと君に伝えず

○P24
待つことの時の長さは消えゆくも見送る思い深く残りし

○P39
映画でも誘うみたいに君が言う電話のむこう「結婚しようよ」

○P67
「ずっと一緒」と君書き送りし手紙にも消費期限のあることを知る

○P75
僕たちは明日から出会う前よりももっと他人になるのだから
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「熱ありしこと〜」も心情をイメージできる気がしますし、「もっと他人に」という言葉も、覚悟というかずっしりとした重さを感じさせられました。

なお、著者の沢木理桜さんは、blogも運営されています。最新記事「明けましておめでとうございます - berry*berry〜恋ヲスル果実」によると、昨年末体調を崩されていたとのこと。本の感想とは関係ありませんが、ご回復を歓び、今年一年健やかに過ごされることを祈ります。


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詩心―永遠なるものへ(中西進・著)




詩心―永遠なるものへ (中公新書)』を読みました。

○万葉の遠い風景
○詩歌が映す命の華やぎ
○自然にこだまする俳句

本書は上記三部で構成されています。「万葉の遠い風景」は、歌を題材に見開きにおさまるサイズの文章で、歌の鑑賞も含めたエッセイがおさめられています。寝る前に一話ずつ読むような付き合い方をすると楽しいかもしれません。
「詩歌が映す命の華やぎ」は、漢詩や現代詩などを扱っているためか、一つの項目を完結させるのに数頁必要になります。これも、詩歌を主題にしたエッセイとして楽しめると思います。「自然にこだまする俳句」は、両者の中間くらいの存在でしょうか。

詩歌の素養がある方から、鑑賞する際の手ほどきを受けるように読んでも構わないでしょうし、そうしたことは忘れて、読み物として楽しむこともできる一冊です。


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猫のしっぽ―101匹猫の俳句大行進(白石冬美・著)




猫のしっぽ―101匹猫の俳句大行進』を読みました。モノクロの猫写真と、猫への優しい眼差しを感じられる俳句をおさめた一冊です。印象に残った俳句を引用します。「P」は引用もとのページ数を意味します。

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○P6
うす碧の片目まぶしい仔猫の瞳(め)

○P8
長閑(のどか)ァと口裂くるほど猫あくび

○P10
雨だれを子猫が読んでる窓ガラス

○P14
読みかけの本を子猫に獲られけり

○P30
ヒゲぴんと麦藁帽子をゆりかごに

○P40
亡き猫のたわむれいたりし草の花

○P46
仔をくわえ猫の引っ越し祭り笛
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様々な猫の表情や様子が目に浮かぶようで、少し温かな気持ちになりました。本書を手にして良かったです。


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戦争と短歌(近藤芳美・著)




戦争と短歌 (岩波ブックレット)』を読みました。本書は、「わらび座と文化運動を考える会」主催の公開講座(1990/08/12)の講演を加筆したものです。(本書P62、編集部注記より)

戦争にまつわる短歌と、その短歌の情景や背景を静かに解説する一冊です。著者自らの戦争体験の中で、遺書を書かされる場面が登場します。昨日まで漁師をしていた兵士が、ゆびおり数えて、短歌を作り、家族になんとか気持ちを伝えようとしたのだそうです。著者の静かな語り方が、かえって強く心に残りました。

以下、印象に残った短歌を引用します。「P」はページ数を示します。
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○P10
のぞみなき事といひつつ顔を剃り突撃隊を率ゐ行かしし

○P15
寄り来りあかつき谷に友を焼き火の燃えたつを見つつ別るる

○P21
うら若き敵の屍よ細き指あはれ美しく爪を切りたり

○P25
担架にて壕ゆく屍を送り立つ曇り夜の星見えて光なし

○P46
硫黄島落ちて十年子を連れてきみ新しき妻となりゆく

○P57
転びしことが弾みとなりて泣くわれに背のおさなごが立てよと励ます
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解説とあわせて読んだこれらの短歌、大事に覚えておこうと思います。本書を手にすることができた幸運に感謝します。


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